ののかのプチエッセイ

エッセイ、俳句など発表します。

よろしくお願いいたします。

こんにちは。

ブログ「花とウォーキングシューズ」https://natsunoasa777.hatenablog.com/

のののかです。

あらためましてブログを分設いたしました。

二つのブログを一日おきに発表したいと思っています。

どうぞお楽しみいただけたら幸いです。

ここでは音楽とエッセイと俳句をやります。

全部バラバラかもしれませんが、どうぞご了承ください。

 

 

まず今日のエコーポップからです。


www.youtube.com

ハンク・モブレー My Groove,Your Move  テナー・サックスの奏者です。

ハンク・モブレー - Wikipedia

 

 

さて、めだかが階下に降りていくと、新聞を前にした両親がテレビを見ながら遅い朝食を摂っていた。

紅茶カップを持ったままの父親がくすくすと笑って、「一緒にサツマイモを食べるんだって。面白い。だろう?」と同意を目の前の母に求めている。

母親は耳が遠いので父親の言うことに気づかず、新聞のナンプレから目を離さない。

 

父親の相手をしないとまた寂しがるなと思っためだかが

「何のこと?」と聞くと、

「四国のどこかの村で和紙を作るためのコウゾを蒸しているんだが、その時に一緒にサツマイモを蒸して、作業している人全員のおやつにするらしい」とテレビの放送内容を説明してくれた。

そしてまたくすくす笑って、今度はめだかに

「面白いだろう?」と繰り返す。

 

「何となく面白いのはお父さんの方だ」とめだかは思った。

そんなささやかな話を面白がるなんて、きっと過去に似たような経験があるに違いない。

さては昔、子供の頃か、仕事している頃か、仲間と何かの折に焼き芋かなんか作って食べたことがあったなあ。

 

父親はめだかとよく似ている。

気が小さいところも、神経質なところも、癇癪起こしたら手に負えないところも。

言っちゃ悪いがどちらかと言えばあてには出来ないタイプなのだ。

 

でもそれでも話を聞いていると、父親なりに年を重ねてきちんと老境にはいることができたんだなあと思う。

のどかにくすくす笑うことの出来る朝、父親の穏やかな感情はまるで、ごっとん、ごっとん、と楽しい音を立てて水車が回る春の小川のようだ。

その心地い良い流れの淵に立っていると、めだかの心も柔らかく解きほぐされていくのを覚える。

 

特段に周囲に気を回さなくても、リラックスして好きなことを喋るだけで、年取った人は周囲を和ませることが出来るのかもしれない。

めだか自身もお世辞にも穏やかな生き方をしてきたわけではないけれど、いずれ父親のようになることができるのかもしれない。

 

めだかの小さい頃は機能不全ぎりぎりでしかなかった家族だが、それぞれが荷を降ろすようになり、癖のある人間同士でもなんとか得難い関係を保つことができている。

今が一番良いのかもなあとめだかは思った。

 

テレビはH3ロケットが打ち上げに成功したと放送している。

 

「大変なプレッシャーだったろうからね。成功して良かったよ」

母親がナンプレから目を離して、二人にそう言葉をかけた。

 

 

 指先の木肌潤ふ春の雨